華やかさの中に潜むスタイリッシュドライな土佐の男酒「南」

今やすっかり関東でも人気が定着した感のある「南」ですが、生産量はわずか300石余りと極めて少ないのが実情です。明治2年（1870年）の創業以来、地元高知では「玉の井」の酒名で知られています。
南酒造場は高知県東部の安芸郡安田町にあり、日本一美味と賞賛される天然鮎が遡上する清流・安田川の伏流水で代々酒造りを行ってきました。
蔵の名を冠した「南」は、精米歩合60％以上の特定名称酒のみの限定流通ブランドで、淡麗辛口の男酒と言われる高知の酒の中ではやや異色の華やか且つ味わいの骨格がしっかりと感じられるタイプです。これは自由を尊重する土佐の気風が生んだ郷土料理「皿鉢」の食のスタイル、つまり料理を囲んでそれぞれが色々な食材を同時に楽しむため、それに対応できる酒をイメージしたのが「南」というお酒です。
香り高く旨味がありながらもその余韻は短く、スパッと洗練されたドライな切れ味が冴え渡る「南」は、流行の味を追った酒などではなく、土佐の味覚を受け止める男酒なのだと思います。